酸化は本当に悪者?(脂質酸化の入門)
2025年10月12日
酸化の善悪
「酸化」と聞くと、
「老化は身体の錆」「酸化した食品はNG、抗酸化食品を!」といったイメージが先に立つかもしれません。
たしかに極端な酸化状態は体調不良の原因になり得ますが、私たちの身体は強い恒常性を持ち、脂質酸化物の量も精妙にコントロールされています。じつはこの“ほどよい酸化”が健康維持に役立っている側面もあります。
食べ物でも同様です。極端に酸化した食品は好ましくありませんが、実際に私たちが口にする多くの食品には脂質酸化物が含まれます。ステーキの香り、天ぷらの香り、オリーブオイルの個性的な香り――いずれも脂質酸化物が香りの要素です。
余談ですが、オリーブオイルは「酸化しにくい油」の代表格である一方、購入直後の段階でも他の油(例:菜種油)と比べて脂質酸化物の含有が高いことが知られています。つまり脂質酸化物=悪ではありません。もし酸化物をきれいさっぱり取り除けたら、私たちの食卓はずいぶん無味乾燥になってしまうでしょう。
この「最新の科学」カテゴリでは、こうした脂質酸化の基礎から、料理や健康との関わりまで、できるだけやさしく解説していきます。